cachikuのブログ

元「本を読んだ気になるブログ」です。個人の備忘録である点は変わりません。

「自分がいなくてもこの会社は回る」と感じて転職相談に来た後輩に伝えたこと。

12月に入ったばかりの頃、ある後輩(年は10年ほど離れてますが)から転職相談をされました。元ニートなのに。笑。もともとキャリア系の仕事をしていたからでしょうか。人を肩書きや職歴で判断してはいけないよ、Y君。

 

というわけで、今日は彼から転職相談を受けた話です。

 

 

彼は今、あるIT企業でwebディレクターを担当。世間的にわりと知られたサイトの運営全般を仕事にしていました。

そんな彼、2017年初頭の配置転換でそのサイトの担当になったそうです。ということは、それまで彼が中心となって回していたサイトは、別の担当者に引き継がれたというわけですね。

 

で。

それからしばらくして、彼はこんなことを思ったそうです。

 

「・・・あれ? あのサイト、俺じゃなくてもちゃんと回ってね?」

 

そう思ってから改めて社内を見回してみると、展開しているサイトはどれも、担当者が変わってもしっかり回っていたそうです。もちろん中には閉鎖に追い込まれたサイトもあったそうですが、総じて見ると全般的に概ね堅調とのことでした。

 

で。

そこでまた、彼は思いました。

 

「・・・この会社、俺がいなくても回るんじゃね?」

 

     *

 

ひとたびそう思うと、仕事に対するモチベーションがどんどん落ちていったとのこと。そして「交換可能な会社の歯車であり続けるのは嫌だ」という思いが強くなり、転職を決意したそうです。

筆者が彼に会ったのは、ちょうどこのタイミングでした。

 

で。

この話を聴いて、筆者が真っ先に思ったこと、彼に伝えたことは、

 

「キミがいないと会社が回らない状況ってヤバイよね?」

 

ということでした。

 

     *

 

「ある特定の社員がいないとサイトは回らない」「このサイトの雲影はあいつにしかできない」という状況は極めて不健全です。会社からすればリスクしかありません。その人が休んだら1日更新がストップしますし、辞めたらサイトは閉鎖です。

つまり組織の中で働く以上、人は交換可能な歯車でなければなりません。そうしないと会社が損害を被ってしまいます。最悪、事業や会社が潰れてしまいます(彼も異動の際に引き継ぎを行っているから、そのへん自覚があると思ったのですが・・・)

 

ですが、仕事において、この「交換可能じゃない社員としての自分」「この仕事は自分にしかできないという優越感」を追求してしまっている人は、思いのほか多いような気がします。

それを特に強く感じたのは、新卒向けの就活サイトを運営していた時。いわゆる意識の高い就活生であればあるほど「会社の歯車になるのは嫌だ」といったニュアンスのことを口にしていましたね。人間は社会の歯車である以上、どこにいっても歯車なのだと思うのですが・・・。

 

     *

 

もし前任者である彼が抜けて、現任者である後任に溜めた経験やスキルを再現できる形で引き継がなかった(彼が言うところの「彼がいないと会社が回らない」状態にある)としましょう。すると、どうなるか?

後任者はまた1からいろいろ考えて「このサイトはどう運営すべきなのか」を考えることになります。つまり、彼が歩いたのと同じ道を再び歩くわけです。二度手間、より露骨な言い方をしてしまいますと「無駄」なわけです。なに一つ良いことがありません。

 

また、このやり方では事業は成長しません。担当者が変わるたびに溜まった経験が漏れなくリセットされるからです。ですから、サインコサインカーブのような成長曲線を下降気味に描き続けて、やがて事業は、会社は潰れてしまうでしょう。

 

事業や会社が成長できるのは、前任がストックした知見の上に後任が新しく価値を積み上げるからです。そして、前任の築き上げてきたものがしっかり引き継がれて初めて、後任は新たな価値を生み出す、より上の挑戦に取り組むことができます。

 

     *

 

ジョブス氏が亡くなっても、ゲイツ氏が去っても、アップルもマイクロソフトも存続しているわけです。

とはいえ、最終的には本人がどうするかですから、特に引き止めたりはしませんでしたが(筆者も転職しまくってますからね。苦笑)・・・はてさてどうなりますか。