cachikuのブログ

元「本を読んだ気になるブログ」です。個人の備忘録である点は変わりません。

【ラノベ創作論】ラノベのバトルシーンの演出について考えてみる

久しぶりにラノベの話でも書こうと思います。

今回はバトルシーンの演出の話です。具体的にはスピード感と臨場感の話。

 

いきなり余談ですが、直木賞作家・桜庭一樹さんのプロットには、物語のスピード感に関する記述があるそうで、いつぞやの編集さんが「そこまでやってるの先生くらいですよ」とおっしゃっていたそうです。

 

 

バトルシーンの演出法には、大きく「スピード感」で魅せる方法「臨場感」で魅せる方法の2手法があると思っています(魔法を格好良く魅せる方法とか、バトルの内容そのものを表現する手法などは、今回は考えません。バトルの流れを魅せる方法のみです。


1. スピード感で魅せる方法とは?

バトルの中で起こっている事実を、短いテンポでリズム良く書いていく方法です。個人的にこちらの手法を最初に学んだのは、冲方丁さんの『マルドゥック・スクランブル』だったような気がします。

 

マルドゥック・スクランブル〈改訂新版〉

マルドゥック・スクランブル〈改訂新版〉

 


マルドゥック・スクランブル』を初めて読んだ時、とにかく頭の中で画がどんどん切り替わっていく感覚に驚きました。特に下巻のバロットとボイルドのバトルシーン。結構な長さがあったと思いますが、一気に読み切ったのを覚えています。

 

その経験をしてからというもの、なぜこうした感覚が湧き上がるのかを言語化したくて何回も読み直しました。結果、いくつか自分なりの結論として手に入れたのが、例えば以下のようなものです。

 

  • 短文をつなぐ
  • 読点をまったく使わない
  • 改行を多めにする
  • あえて改行しない
  • 体言止めを多用する
  • 徐々に一文を短くしていく
  • 単語自体にスピード感があるものを使う
  • 一つ一つの展開を具体的に書く
  • 文末を同じ音にしない
  • 主語を省く

 

いくつか補足します。

 

     *

 

(改行について)

改行については難しいところですね。

改行とは不思議なもので、直前の文とのつながりがそこまでない文章でも、強引につなげることができるんですよね(この使い方は新聞記事やインタビュー系の記事などでよく見られる気がします)。だから場面をいきなり変えられます。その強引な場面転換力をスピード感につなげるのです。

 

ただ、短文を改行しまくると、それだけページ数を圧迫します。応募原稿に上限枚数がある新人賞で、これは致命的ですね。

 

そのため、個人的には当初「あえて改行しないで短文をひたすらつなぐ」という形でスピード感を演出していました。ですが、これはSFなどの読者層には向いていても、ライトノベルの読者層には向かない気がしています。

理由は単純で、文章量が増えるから。ライトノベルの読者層は文字どおり「ライトなノベル」を求めているわけですから、文章量が増えすぎますとニーズに応えられなくなってしまいます。

 

よって、ライトノベルでは「短文+改行」でスピード感を演出するほうが良いような気がしています。

……とはいえ、ちゃぶ台をひっくり返すようで申し訳ないですが、やはり書きたいように書くのが一番です。ガチガチにノウハウ準拠で書いたところで、面白くないですしね(おい。苦笑)

 

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(それ自体にスピード感がある単語について)

例えば「突撃」とかわかりやすいんじゃないでしょうか。それ自体に勢いがありますよね。こうした単語はスピード感を演出する上で、とても便利だと思います。

ほかには「加速」「連撃」「苛烈」「疾風迅雷」「颶風」「鮮烈」「凄絶」「激烈」「交錯」「肉薄」「最速」などなど。

 

「遂に」「瞬間」などの、時間的な緊迫感・逼迫感を意味する単語も効果的ではないかと思います。スピード感とは、言い換えれば時間感覚でもありますしね。

ほかには「刹那」「直後」「一瞬」「目前」「疾うに」「すぐさま」などなど。

 

基本的には、この両者を組み合わせると、手軽にスピード感を演出できる気がします。「一瞬の交錯」とか「颶風の如く加速」とか「凄絶な連撃」とか「一瞬で肉薄」とか。

 

ただ聴き慣れた単語だと、なぜかスピード感が出にくいのかなという気もしています。「突撃」とか。またひらがなも、あまり使わないほうが良い気がします。「すぐさま」などは、字面が間抜けに見えてしまい、一気にスピード感が落ちる気がします。

このあたりの言語化はまるでできていません。単語の音や文字数の問題な気がするのですが……。

 

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(一つ一つの展開を具体的に書く)

バトルシーンの書き方には、大きく2つあると思っています。それは「戦闘動作を一つ一つ具体的に書く方法」と「ざっくりと書く方法」です。

個人的にスピード感を演出する上では、前者の「具体的に書く方法」がいいと思います。これに「短文をつなぐ」と「改行を多めにする」を組み合わせるとテンポの良いスピード感あふれるバトルシーンが書けるのではないかと。

対する「ざっくりと書く方法」は、後述する「臨場感」の演出に適した手法だと思っています。

 

2. 臨場感で魅せる方法とは?

バトルに賭ける思いなどで読者の熱を高める方法です。

既存の作品で好例だと思うのは『りゅうおうのおしごと』。筆者が大好きな白鳥士郎さんの作品です。特に名人との竜王位防衛戦(5巻)は、この手法を学ぶ上で何回も読み直しましてボロボロにしてしまい、既に4冊目となってしまいました。笑。

 

 

同作は、将棋について詳しく書きすぎると、将棋に詳しくないファンがついてこられなくなることへの配慮からなのか、この手法が多く使われている気がします。

特に5巻の「閃々散華」の章は感涙もの。対局シーンの間にあの章を挟むことで、物語の臨場感(ここでは熱さ)が際立っています。個人的には天衣、歩夢、澪ちゃんのシーンは、もう何回読んでも涙が出ます。

 

ちなみに、こちらの手法で魅せる方法は、物語の後半にならないと使えないと思っています。なぜならバトルの当事者の戦闘に賭ける思いの強さを、ストーリーの前半で担保しておかないといけないからです。

 

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こちらはバトルシーンそのものの魅力を高める手法ではなく、バトルにかける主人公の思いなどを際立たせる見せ方です。つまり「キャラクターの魅力を高める」ことで、読者の「感動」や「共感」を引き出す方法です。

 

そのための構成としては、「バトルについてざっくりと書く」と「バトルに賭けるキャラクターの思いを書く」の組み合わせが基本になるかと思います。

例えば、セリフでバトルについて表現し、地の文でバトルに賭ける思いを表現するといった具合に、セリフと地の文で完全に分けてしまうやり方ですね。これは常套手段だと思います。筆者もよく使います。ただ、これは地の文が第三者視点でないとできません。

 

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このように、スピード感による演出と臨場感による演出は役割が違います。前者はバトルそのものの魅力を、後者はキャラクターの魅力を、それぞれ引き出すためのものです。よって、表現したいものに応じて、使い分ける必要があります。

 

作品を構成する上では、どちらも必須であり、大切なのはその比率を考えることだと思います。

例えば、作品序盤のバトルで臨場感の演出を強めにすると違和感があります。読者もキャラクターにそこまで感情移入していない段階ですから。また後半のバトルでスピード感による演出を多めにすると、前半のバトルの見え方と変わらない=飽きられやすいリスクもあると思います。

 

というわけで、バトルシーンを書く場合は、物語前半のバトルでは「スピード感」を、後半のバトルでは「臨場感」を、それぞれ意識するのが良いのかなと思います。

 

・・・なんかほかにもいろいろ書こうと思っていたのですが、忘れてしまったのでここまでにします。苦笑。

 

なにか思い出したら、また追記したいと思います。