cachikuのブログ

元「本を読んだ気になるブログ」です。個人の備忘録である点は変わりません。

クラウドソーシング(でトライアルを依頼した48人)のライターに伝えたいこと

ここ数ヵ月、立ち上げ準備中のオウンドメディアで執筆してもらうライターさんを探すために、クラウドソーシングでライターを募集していました。今回はそのときに感じたこと、クラウドソーシングで活動されているライターさんに伝えたいことなど、もろもろ気ままに備忘するだけです。

 

クラウドソーシングのライターは、残念ながら「質が悪い」という悪評が立ってしまっており、そのため一般的には1文字0.5円前後という、およそ生活できない破格の単価で募集がかかっています。もっとも依頼側がその単価で出すから、ライター側も質の低い記事しか上げてこないという面もありそうですが・・・(いやそれ以前に応募しないのかな?)

 

今回、筆者は複数のサービスでトライアル案件を立てました。成約後単価は最低ライン(秘密)を決めつつ、トライアルの実績に応じて改めて設定するという条件です。

結果、応募してくださったのは、複数サービスで合計48人。そして最終的に採用に至ったのは、2人でした。ちなみに2人をAさん・Bさんとすると、Aさんの成約後単価は15.0円、Bさんは12.5円。1記事の文字数下限を3,000文字としているので、記事ベースの単価は、Aさんが45,000円〜、Bさんが37,500円〜ですね。

一方、お二人以外の46人の方は、残念ながら不採用となりました。

 

不採用理由の7割は「音信不通」

不採用となった46人のうち、35人ほどは記事の品質とは違う理由で不採用となりました。それは「音信不通」です。

 

簡単にいえば、トライアルの要件をお送りして「かしこまりました」「納期までにお送りします」という返信をもらったあと、いっさい連絡が取れなくなりました。お一人だけ「申し訳ありません。実力的に厳しいので辞退させてください」とご連絡をいただきましたが、残りの方は漏れなく音信不通になりました。

トライアルの基準が厳しかったというのは、正直あると思います。ですので、何名かは連絡が途絶える可能性も事前に織りこんでいました。とはいえ、まさか30人以上の方が連絡なく辞退に至るとは、思ってもみなかったですが。

 

また、募集文をきちんと読まずにトライアルがないと思って応募してきている方も、けっこう多かったです。そういう方は、トライアルの要件をお送りすると「かしこまりました」的な返信もなく音信不通になりました。

 

完全コピペ記事はないけど、ややコピペ記事があまりにも多い

次に不採用となった記事の話です。

理由としては、文脈のつながりがおかしい、エビデンスがないことを書いている(しかも事実誤認である)、商標登録されている単語に©をつけていないなど、いろいろあります。ですが、正直これらは些細な理由です。指摘すれば直るだろうな程度の軽微なものであれば、少し甘く見ていました。

 

最も多かった不採用理由は、ややコピペな記事であるというもの。大半の記事が検索上位のサイトやブログの情報を切り貼りして、完全コピペにならないよう自分なりの言い回しに変えただけのものでした。

 

また驚いたことに、ほとんどの記事が、応募者の一人が書いた原稿を共有して言い回しを変えただけの記事としか思えないほど似通っていました。盛りこんであるネタはびっくりするほど同じ。記事は検索上位のサイトから情報を引っ張ってきて書きましょうというノウハウがネットや情報商材で出回っているのかと思うほど、瓜二つでした。

 

そんな有様だったので、クラウドソーシングからのライター募集は、2人目の方が採用できた段階でやめました。将来的にまた利用するかどうかは検討中ですが、おそらくやらない可能性が高そうです(費用対効果が悪すぎるので)

 

プロとしての自覚を持ってほしい

クラウドソーシングのライターさんがすべてよろしくないかというと、もちろんそんなことはありません。真面目に・誠実に取り組まれている方も、たくさんいらっしゃると思います。実際、今回ご応募くださり、残念ながら不採用となってしまったライターさんのなかにも、取り組む姿勢自体が素晴らしい方は少なからずいらっしゃいました。

 

また、筆者のライターとしてのキャリアの実質的なスタートがクラウドワークスだったので、クラウドソーシングを否定的に見たくないという身内贔屓的な思いもあります。その実績があったことで、やがて実用書のゴーストライターのお仕事をいただけたり、上場企業で就活サイトの副編集長として働けたり、元日本代表のJリーガーの方の講演資料をつくらせていただいたりと、数多くの得がたい体験をさせていただきました。それらは間違いなくクラウドワークスがあったからこそ実現できたことです。

 

しかし、正直いまのクラウドソーシング系のライターさんに仕事をお願いするのは、なかなか難しいなとも感じています。

 

なにより気になっているのは、プロ意識の低さ。記事のクオリティ、基本的なマナー、すべてにおいて首を傾げざるを得ません。そして、そうした対応が発注者からネットに回り、ネット全体に「やっぱりクラウドソーシングのライターって糞だわ」という空気を広げてしまいます。それが負の連鎖として常態化し、その空気がより強く固定化されているのが現状でしょう。

 

クラウドソーシングに登録しているライターさんのなかには、ライターという仕事を「気軽なお小遣い稼ぎ」として見ている方も多いと思います。筆者も過去に「わざわざ時間をかけるなら、ブログ書くより、ライターとしてお金をもらったほうがいい」というライターの方に何人かお会いしました。

ただ、ご本人はブログの延長線上かもしれませんが、依頼する側から見ればプロです。当然、顧客が求めるクオリティを担保しなければなりません(というか、ブログを書くのも楽じゃないですけどね・・・)

 

赤字覚悟でクオリティを追求したほうが長期的には良い

ただ、安い単価に不満があるライターさんも多いと思います。

「ライターなめんな」「安い報酬にはそれに相応しい程度のクオリティしか担保する必要はない」

そんな声を筆者も数多く聞いてきました。その怒り故に、単価相応のクオリティのみを担保して納品しているライターさんの話も、たまに聞きます。

 

1文字0.5円の場合、月給300,000円を稼ぐためには、600,000文字もの文量を書く必要があります。文庫版の小説4冊ぶんほどの量です。それを一定のクオリティを維持しながら1ヵ月で書き切るなど、およそ不可能でしょう。つまり、1文字0.5円では生活できるわけがありません。

 

筆者も一時期「1文字0.5円とかなめてんのか」と思っていました。そして「0.5円程度のクオリティだけ維持して、とにかく数をこなすようにしよう」というスタンスで記事を量産していたことがあります。

ですが、それで真っ当な生活を送る水準まで稼ぐことは上記のとおり不可能です。また発注者側のクラウドソーシングのライターに対する相場観は、残念ながらすぐに変わらないでしょう。これからもずっと文字単価0.5円前後のままだと思います。

なぜ相場観は変わらないのか? 筆者が関わった業者さんからの想像ですが、みんなクオリティを求めていないからです。大半の業者さんが、納品した原稿に校正も校閲もかけずに、そのままアップしていたので(おそらく)

 

そう思った筆者は、とにかく量を書いて短期的な黒字化をめざすのではなく、1本のクオリティを限界まで高めるスタンスに変えました。そして、それらの記事を実績として営業をかけたり、ブログで仕事を募ったりするようにしました。

具体的にやったことは、

  • ある分野に特化する(筆者の場合は就活)
  • 記事1本のクオリティをとにかく高める
  • ブログなどで、実績をアピールする

ざっくりですがこんな感じです。

結果、そのブログからゴーストライターの依頼が舞いこみ、そこから就活サイトの副編集長の話につながりました。そして、かつては1文字0.5円で仕事を受けていましたが、いまは1文字20.0円にまで上げることができました。

 

ただしこのやり方は、当然ながら赤字に陥ります。一定の修行期間を設けるわけですから。

会社の新入社員を考えるとわかりやすいでしょう。入社からしばらくのあいだ、彼らの多くは研修期間に入ります。つまり赤字を生み続けます。やがて一人前となり、その負債を帳消しにして自身のPLを黒字化するまでには、けっこうな時間がかかります。これと同じです。

 

ただ、会社員の場合、この赤字は意識せずとも生きていけます。会社が給料を払ってくれるからです。ですが、フリーの場合は、そうはいきません。その赤字はすべて自分で背負うことになります。身銭を削って生き続けなければなりません。

 

ですが、長い目で見れば、やはりこっちのほうが良いと思います。

確かに一時期は苦しいです。着々と減り続ける貯金と向き合うのは堪えるでしょう。ですが、本気でやっていれば、2〜3年くらいでとりあえず生活を回せるくらいの実力はつく気がします。

 

発注者側にも問題がある

・・・と、ここまでライターさん側ばかりに問題がある感じの書き方になりましたが、もちろん発注者側にも問題があります。

 

まずはもちろん単価です。たしかに1文字0.5円が相応しいクオリティの原稿であれば、その額でいいと思います。ただ、知り合いのライターさんたちの話を聞く限り、どうにも安く使ってやろう感が強い気もします。どんなクオリティの原稿を上げても、そもそも単価を上げる気がないといいますか。

 

あと、単価のかわりに依頼案件数を増やすというやり方も気になります。

以前、関わっていた業者さんで、単価交渉を申し出たら「いまは厳しくて・・・。かわりにたくさん発注します!」と、一気に50記事とか100記事とか発注してきたところがありました。

そのときは「おーたくさんきたー」と喜んだのですが、10記事20記事とこなすうちに、ふと「・・・あれ? これって便利に使われてるだけじゃね?」と思いました。

単価を上げずに発注案件を増やせば、それだけ大量の記事を安く仕入れることができます。そして納品が完了したら、再度の単価交渉を切り出される前に「今回はありがとうございました! また機会があればお願いします!」で関係終了。これを繰り返すだけで、ものの見事に大量の記事を安く仕入れることができる・・・。

そう思って以降、大量発注の依頼はいっさい受けなくなりました。便利に使われてポイされる可能性が高いからです。このあたりの感覚が麻痺してしまっているクラウドソーシングのライターさん、意外と多いのではないかと思っています。発注数が多い依頼=良い依頼、という罠に陥ってしまってはいないかと。

 

ちなみに、固定報酬制も同じようなニオイがするので、手を出しませんでした。月額50,000円で募集している案件をよく見かけますが、文字単価に換算すると、0.5円レベルまで落ちるんじゃないかなと思っています(もちろんそうした悪どい理由ではなく、善意ある条件として提示されている業者さんもいると思います)

 

ほかにもフィードバックが雑すぎるなどいろいろありますが、書き出すとキリがないので割愛します。

 

     *

 

クラウドソーシングは、新たな可能性を広げた素晴らしいサービスだと思います。先にも書きましたが、自分自身クラウドワークスがあったからこそ、いまライター・編集者として働けているので。また主夫・主婦の方などに新しい働き方を提供したという点でも意義深いサービスだと感じます。だからこそ、クラウドソーシングがより健全なサービスとなることを願ってやみません(それなら今後も使えよと思わなくもないですが、そこはやはりビジネスですので、申し訳ないですがドライに判断します)

クラウドソーシングのライターさんがさらに実力をつけて、みんなが「1文字0.5円なんかじゃ受けませんよ」と強く言えるようになれば、自然と単価も上がっていくか、不当に安い業者さんは自然淘汰されるでしょう。いつかそんなサービスになったらいいなと思います。

 

というわけで、これにて。

思いつくまま書いたので、まとまりがなさそうですが、もう見直すのも面倒くさいので(ライターにあるまじき暴挙)、そのまま公開。

 

眠いので寝ます(働け)